Front Page                                                                                                            2019,04,15 初稿

WiFi用八木・宇田アンテナ・アダプターの製作

WiFiルータ用に八木・宇田アンテナ・アダプターを作った。特徴はルータの上に突き出た棒状アンテナに被せる構造だ。

このアダプターをルーターの無指向性棒状アンテナに被せるだけで鋭い指向性を備えた八木・宇田アンテナに変わる。
ブーム部の工作には3Dプリンターを活用して正確且つ簡単に済ませた。以下に詳細を説明する。

                       

1. 製作の目的

自宅は団地の一区画でWiFiのルーターは北側の窓際に設置してある。
南側のリビングでラップトップパソコンを使う際にルーターと離れている為に電波が弱い。

また近隣のWiFi電波が沢山飛び交っており干渉が懸念される。
当家のWiFi電波も近隣へ漏れ出て何らかの影響を及ぼしているかもしれない。

鋭い指向性を備えた八木・宇田アンテナ・アダプターを使用し、
我が家の区画では電波を強化近隣へ漏れ出る電波を弱くする。

2. 素子の位置と長さの設計

設計にはYAGI CALCULATORを使わせて頂いた。( 
http://www.vk5dj.com/yagi.html )
中心周波数を24.12GHz、導波素子の数を5、素子の太さを4mmと入力し
計算させたところ以下のような結果が表示された。



Web上には幾つかの八木・宇田アンテナ設計ソフトが存在するが、YAGI CALCULATORは秀逸だ。

3. 設計の検証

Web上には複数の八木・宇田アンテナ設計ソフトがある。それらを使って設計すると結果が少しずつ違う。
これは利得優先か、前後比を重視か等の設計方針によって変わったと思われる。
しかし何れのソフトも明記していない。そこで別のソフトを使って検証した。

検証にはYagiCADを使わせて頂いた。 ( http://www.yagicad.com/yagicad/YagiCAD.htm )
利得12.27dBiと計算された。
設計に使ったYAGI CALCULATORでは11.9dBiと算出したので概ね合致している。
利得の周波数に対する変化が平坦で全WiFi帯域で使えそうだ。

 

指向性は下図のようになった。後ろや横方向への放射が良く抑えられている。


YagiCADは設計に使用したYAGI CALCULATORと同様に素晴らしいソフトだ。
この様な凄いソフトが無料で提供されているのは驚きだ。製作者に感謝。
 

4. 素子支持部の設計と印刷

素子の支持部は3D-CADを使って設計し、3Dプリンターで印刷した。
長さ155mm、幅66.5mm、ブーム部の高さ10mm、キャップ部の高さ40mmにした。
丸い柱状の部分はルーターのアンテナに被せるキャップ部で内径は10mmだ。



下の写真は3D-CADで設計したデーターを使って印刷した結果だ。
PLA樹脂を使い概ね1.5時間で印刷できた。


5. 組み立て

印刷した素子支持部へ所定の長さに切ったアルミパイプを差込み八木・宇田アンテナ・アダプターは完成した。

アルミパイプは外径4mm、内径2mmで、Super VAVAHOMEで122円/1mだった。
各素子の長さは、金鋸、ヤスリとノギスを使って誤差0.1mm程度に調整した。

素子の固定には接着剤等は使っていない。
所定の長さに切った素子を電動ドライバーに固定し回しながら差し込むとピッタリと収まった。
回転による摩擦によって発熱しPLA樹脂が融けてパイプの固定に丁度良い寸法に合うようだ。


アルミパイプを直角に切断する為に、治具を3Dプリンターで作った。
太い部分の直径は50mm、細い部分は20mmで全長は60mmだ。
この治具にアルミパイプを通して金鋸で切断した。


金鋸のハンドルも3Dプリンターで印刷した。刃はダイソーで購入した。
ハンドルのデータはThingiverseから頂いた。  https://www.thingiverse.com/thing:2274031


6. 性能の検証

リビングのラップトップパソコンにWiFi Analyzerというアプリを導入し、これを使ってWiFi電波の強さを測定した。
下の図は八木・宇田アンテナ・アダプター在りと、無しの場合の表示を継ぎ接ぎして見易く纏めたものだ。

左端の高い山が八木・宇田アンテナ・アダプターを使った場合、右側はアダプター無しの状態だ。
設計では12dBi程度の利得を想定していたが、それに符合した測定結果が得られた。
12dBiを平易に表現すると電波の強さが約16倍という意味だ。素晴らしい性能だ。


沢山の山は近隣のWiFi機器が出している電波だ。数えてみたら19局も在った。
指向性も測りたかったのだが、適当な測定手段を持っていなかったので実現できなかった。

7. 3Dプリンターの利便性

八木・宇田アンテナ・アダプターは単純な構造だが、3Dプリンター以外の方法で作ろうとすると
各素子とブーム部の固定方法が複雑になり手間の掛かる工作になる筈だ。

自分は3Dプリンターを使ったので簡単な作業だった。
3D-CADで設計すれば印刷は3Dプリンターに御任せだ。
今回の場合には印刷に1.5時間を要したが、火燵に入って御茶を飲みながらTVを見ている間に出来上がった。

この簡便さが新たな問題を生んでいる。
いい加減な設計で充分に吟味せずに印刷し、印刷物を見て間違いに気付く。
また間違いが無くても、作ってみて気に食わない場所があると修正したくなるのだ。
そのままでも使える完成度に達していても改良しないと気が済まない。その結果が下の写真だ。



沢山の無駄を出したようだが、安価なフィラメントを使っているので一個あたりの材料費は、たった16円(8グラム)だ。
金額的には気にする必要が無い程度の無駄なのかもしれない。
なお今回の工作では、印刷の失敗はゼロだった。我が3Dプリンターは信頼性が高く印刷の失敗は殆ど無い。

この資料をThingiverseに掲示した。
    https://www.thingiverse.com/thing:3576653