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デジカメによる手動レンズの試験
('12,05,02 掲載開始 )
銀塩一眼カメラ用の交換レンズをデジタル一眼レフカメラに使うと画質が低下するとの説を聞いた事がある。
低下する理由はいろいろと在るらしいが、納得できる理由を知らない。
そこで手持ちのNikon製デジカメと、約30年前の手動単焦点レンズで確認実験を行った。
その結果、問題点は見つからず、自分には充分な画質が得られた。
また最新のプラスチック非球面ズームレンズよりも古い単焦点レンズのほうが解像度が高かった。
左からTOKINA 28mm F2.8, Nikon50mm F1.2, MicroNikkor 55mm F2.8です。
1. 背景と目的
長年Nikonの一眼レフを使ってきた。
Nikomart ELに始まりF3やF4も持っている。EL以外は中古で買った。
高速で移動する物を撮影する事は無いので自動焦点の必要は感じていない。
自動焦点の機能を削ればカメラが軽く小さくなり、旅行等の携行に便利だ。
そのため今もF3を愛用していて手動の単焦点交換レンズを何本か持っている。
Nikonの一眼レフは最初のNikon-Fから現在のデジタル一眼に至まで一貫してFマウントを採用している。
絞りの連動機構や自動焦点などの機能を追加したことで子細な変更は在ったが、
固定方法やフランジバックの長さは同じなので古いレンズをデジタル一眼に取り付けられる。(注1)
最初に買ったデジタル一眼はNikon D80だった。
古い手動単焦点レンズを取付けられるが、露出は連動しない。
撮影後にヒストグラムを表示させ試行錯誤で丁度良い露出に合わせていた。
古いレンズを使うには甚だ不便だったが、画質が悪いと感じた事は無い。
その後D7000を買った。殆どのFマウントレンズが使える優れ物です。
これにはAi以降の手動レンズとの絞り連動機構が備わっている。(注2)
カメラを絞り優先モード(A)に設定すればカメラが自動的に最適なシャッター速度で撮影してくれる。
また駆動モーターを内蔵していない自動焦点レンズにも対応している。
下の写真はD7000に50mm F:1.2のレンズを取り付けた様子です。
レンズの先端にはゴム製フードを装着しています。
この組み合わせなら薄暗い場所でもストロボ無しで撮影できます。
手動焦点レンズでの撮影が便利になったので画質低下説の真偽を確認したくなった。
注1:最近のミラーレス一眼はマウントが異なります。
注2:多くのNikon製デジタル一眼には手動レンズとの絞り連動機構がありません。
2. 実験方法
ベランダに三脚を立ててD7000を固定し、レンズを交換して家の前の風景を撮影した。
比較用レンズは18mm~55mm VR 、18mm~70mm、18mm~105mm VRの三本で
何れも非球面レンズを使ったズームだ。 どのレンズも絞りをF8に固定して実施した。
保護フィルターは総て外した。
カメラの色温度は曇天に合わせISOは800で撮影した。
撮影後の加工はWebに載せるため小さくしたが
輪郭強調や色調補正などは行わずに比較した。
3. 結果
3-1 Tokina 28mm F:2.8
撮影当日は曇りで雲の位置によって明るさが変わったので明るさに違いが在る。
Tokinaはコントラストが高くメリハリが在る。
ズームレンズは倍率の高いレンズほど樽形歪みが大きく左端のビルが曲がっている。
なお下の写真でNikonレンズの28mmは18mmの間違いです。
解像力を評価するためにPhotoshopを使って拡大したが、何れも同じ程度だった。
昔のズームレンズはピントが甘かったが、最近のズームは実用充分な鋭さを備えている。
3-2 Nikon 50mm F:1.2
結果は下の写真のようになりました。
50mm F:1.2が少し暗いようにも見えますが、コントラストが高い結果と推定しています。
ズームレンズは全体的に白っぽく、奥行感が乏しく見えます。
解像度を見るために上の写真の右端にあるアスレチックジムの部分を拡大したのが下の写真です。
その差は歴然でした。50mm F:1.2が他よりも格段に高解像度です。
それに屋根の白さと窓の黒さのコントラストも優れています。
ズームレンズ3本の解像力は価格相応で安価な18-55mmはそれなりです。
Nikon 50mm F:1.2は自動焦点レンズには無い明るさで、コントラストと解像度が共に高くデジカメでも使う価値があります。
3-3 Nikon Micro NIKKOR 55mm F:2.8
このレンズは黴びたジャンクを安く買い、自分で分解掃除した。
絞りの羽根もバラバラに外して洗浄した。
絞りには開度を調整して全開で2.8に合わせる調節機構がある。
その部分の設定が狂っている様だ。他に比べて暗い。
解像度を見るために一部分を拡大したのが下の写真です。
Micronikkor 55mmは解像度、コントラストが高く優秀です。
3-4 Tokina AF Micro100mm F:3.5 ( '12,05,04 追記 )
Tokina製の古い接写レンズです。半年ほど前にオークションで中古品を落札しました。
レンズは綺麗だったのですが、ヘリコイドの油が切れていてオートフォーカスが滑らかに動かなかった。
前のレンズを最大まで繰り出し、細いドライバーの先にシリコングリス付け、
マウント側からレンズ内部へドライバーを差し込んでヘリコイドの端へ塗って解消した。
試写は2千円札で行った。 露出はF:11で1/10秒だった。
三脚と自作の赤外線リモコンを使いLED照明の下で撮影した。
ミラーが上がる際の振動を防ぐため予めミラーアップした。
事前の撮影で自動焦点を使うとピントが甘かったので手動で合わせた。
レンズの先端から対象までの距離は32cm。
下の写真の左は全画面で右は"2"の部分を拡大した。
デジタル一眼で使っても何の問題も感じなかった。
解像度は充分でNIPPON GINKOがくっきりと写っている。
良く見ると紙の繊維も見える。
3-5 TAMRON AF MACRO 90mm F:2.8
( '12,05,09 追記 )
これも中古で買ったレンズですがジャンクではないので分解清掃はしていません。
現行モデルと大きさや形は殆ど同じですが、色が違う旧モデルです。
仕事の記録用に使っています。
Tokinaのレンズと同様に試写しました。
Tokinaのレンズに比べ若干ピンとが甘いような気がします。
レンズの光学的な性能ではなくAuto Focusの能力が影響したのかもしれません。
このレンズもデジカメで問題なく使えます。
3-6 ベローズでの試写 ( '17,05,19 追記 )
Nikon製の古いベローズ(PB-4)を持っている。これをデジタル一眼レフで試した。
Nikon-Fの時代の物なので40年程昔か。
D-7000では、前方に出っ張ったグリップがベローズのノブへ当たって取り付けられない。
そこでベローズとD-7000の間に中間リング(M2)を介して接続した。
レンズは引き伸ばし機用 EL-NIKKOR 105mmを使った。
EL-NIKKORにはヘリコイドが無いので普通は撮影には使えないが、
ベローズが在ればヘリコイドは不要だ。
以前に行った接写レンズの試験では2千円札を使ったが、支払いに使ってしまった。
そこで今度は1万円札で行った。下の写真は撮影した結果でトリミングはしていない。
最下部の縦線は物差しのメモリで間隔は1mmです。故に画像の縦方向は2cm程です。
他のレンズと同様にベローズでも問題は感じられなかった。
拡大写真は掲載しなかったが素晴らしい解像力です。
ベローズ(PBー4)は開放測光ではないし、
露出の連動もできないので撮影は簡単ではない。
Nikon-Fの時代には使いこなすのが難しい機材だった。
デジタル一眼では何度でも撮り直しができる。
撮影後にヒストグラムを表示させれば露出の具合が判る。
何枚か撮影して試行錯誤で最適露出に追い込めるので、
Nikon-F3で撮るよりも格段に楽になった。
ベローズ(PB-4)は水平方向のアオリとシフトが出来る。
これは他の接写レンズに替え難い魅力です。
4. まとめ ( '12,5,19 追記 )
銀塩フィルム時代のレンズをデジタル一眼に使っても何ら問題を感じなかった。
厳しいプロの眼ならば違う結果になったかも知れないが、
アマチュアには充分な画質が得られた。
もしかすると撮像素子の画素数が少なかった時代の話なのかもしれない。
デジカメの技術は日進月歩なので改良が進んだ結果だろうか。
5. 手動300mm望遠の試験 ( '17,07,25 実施 )
昔、高価で手が出なかった300mmのレンズが黴を理由に廉くオークションに出ていた。
具体的な使用目的は無いが、
郷愁にかられて落札した。それに黴なら自分で分解掃除できる。
実物が手元に届いてから点検したところ前面のUVフィルターには黴が在ったが、
本体には黴が見つからなかった。外観は使用感が無く新品並みに綺麗だ。
このレンズを手持ちの現行ズームレンズと比較した。
被写体は、我が家のベランダから600m程離れた商業施設だ。
勿論三脚を使い赤外線レリーズも使った。絞りは11で撮影した。
下の写真で上が今回購入した300mm F4.5 手動固定焦点レンズ。
下が比較用の55-300mm VR 自動焦点ズームレンズ。
結果は下の写真の様になった。左が旧い手動300mm、右が現行の300mmズームだ。
手動300mmは暗く現行品は全体的に白っぽい。
但し現行品の下部はベランダの手摺が被った為に白くなっている。
露出の違いかも知れないが、現行ズームはコントラストが低下しているようで奥行き感が乏しい。
ズームは組み込まれているレンズの数が多いので光の拡散が多い筈だ。
驚いたのは現行ズームの解像度だ。
Photoshopを使って拡大して調べたのだが、手動300mmと遜色が無いほどにシャープだ。
ズームはピントが甘いという昔の常識は通用しなくなった。
画質からの評価は手動300mmに軍配を上げるが、現行ズームには、それ以外の魅力がある。
旧手動300mmは金属製の鏡筒とガラス製のレンズがズッシリと重く手持ちでの撮影は困難だった。
その点、現行の300mmズームは大部分がプラスチック製で大変に軽く
手振れ防止機構も備えているので手持ちでの撮影も可能だ。ここでも昔の常識は通用しなくなった。
技術の進歩は素晴らしい。