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2018,01,01 掲載開始
Bronica ETR - Nikon F マウントアダプターの製作
Bronica ETR 用のZenzanonレンズをNikonのデジタル一眼レフへ接続するためのマウントアダプターを作った。
Zenzanon側とNikon側のバヨネットを始め鏡胴など総ての部品を
3Dプリンターで印刷し、接着して組み立てた。
その結果、実用性を備えたマウントアダプターが完成した。
下の写真は完成したマウントアダプターをNikon D7000へ取り付けた様子だ。赤色の環以後がアダプターだ。
◎可能性の検討
Bronica-ETRはレンズ交換式の一眼レフカメラだが、シャッターは夫々のレンズに内蔵されている。
そのレンズシャッターが障害となってマウントアダプターを作っても撮影できないと考えていた。
ところがBronica-ETRのボディから75mmのレンズを外して中を覗くとシャッターが開いていた。
下の写真ではレンズを通してTVの画面が見えている。
200mmのレンズも同様に全開だった。ボディへ取り付けなければ閉まらない仕組みのようだ。
よって
レンズに内蔵されたシャッターはアダプターの障害にはならない。
しかも、このレンズには手動操作用の
絞り込みボタンが備わっている。
レリーズボタンを押す前に絞り込みボタンを押せば設定に応じた露出で撮影される。
通常のカメラを保持する持ち方だと左手親指の位置に絞り込みボタンがある。
このボタンによって擬似開放測光のような使い方ができる。
検討の結果、
Bronica-ETRのレンズはマウントアダプターに適していると判った。
◎設計と印刷
Bronica-ETRのフランジバックは74mm、Nikon-Fは46.5mmなので、
必要なアダプターの長さは27.5mmだ。
Zenzanonレンズの胴は直径82mmで、Nikon-Fは概ね67mmだ。
両者を繋ぐ長さ27.5mmの異径パイプを作り両側に夫々のバヨネットを設ける。
形が複雑なので機能ごとに小分けにした部品を印刷し接着して纏めた。
衝撃を受けても割れにくいABS樹脂を使うので収縮による精度の低下を防ぐ為の工夫だ。
◎Bronica ETR用 バヨネット部
バヨネットの爪の精度を確保するために2分割にした。
赤い環の厚さは2.4mm、高さ7mm、外径は82mm。
黒い輪は1.2mm。、高さ7mm、外径は79.6mm。黒の下半分が赤の中に嵌る。
◎Nikon-F 用 バヨネット部
鏡胴とNikon-F用のバヨネット部を分けて印刷した。
この部分には強度が求められるため、表皮の厚さを1.2mmに設定した。
鏡胴は厚さ1.2mm、鍔の部分は厚さ2mmにした。
バヨネット部は円筒部の厚さ2.4mm、爪の厚さ1.2mmだ。
◎内部フード部
内部の迷光を軽減するためにフードを設けた。
強度は必要ないので表皮は0.8mmで印刷した。直径は50mmだ。
◎強度の評価
組み立てた鏡筒とnikon-Fバヨネットの強度を試した。
机の上に伏せて両手で体重を掛けたところ下の写真の様に割れた。
鍔と鏡筒の境目が弱いと判ったので内側の角をR5の曲面にして補強した。
◎内面塗装
鏡筒内部の反射を軽減するために黒色の艶消し塗装を施した。
使ったスプレーはタミヤのマットブラック(TS-6)。
明らかに黒色ABS樹脂よりも黒い。その後に全体を接着して完成した。
◎装着試験
下の写真のようにZenzanon 75mmと200mmをNikon D7000へ取り付けた。
Nikon側とZenzanon側、共にがたつきも無く良い感じだった。
◎撮影の手順
◎レンズの明るさをカメラへ登録
D7000やD7200にはレンズ情報手動設定という手動レンズと露出を連動させる機能がある。
Zenzanon 75mmはF2.8なので登録済みのMicro Nikkor 55mm
F2.8を選んだ。
開放値がF2.8のレンズなら何でも良い。
◎カメラの撮影モードを設定
カメラの撮影モードダイヤルをA(絞り優先)に合わせる。
◎撮影
被写体にカメラを向け、絞りを設定し、焦点を合わせて、絞り込みボタンを押しながら、レリーズボタンを押す。
これら一連の動作によってカメラは適切な露出になるようにシャッター速度を制御し撮影する。
◎試写
手っ取り早く我が家のベランダから埼玉県庁方向を手持ちで撮影した。
焦点は県庁付近に合わせた。県庁舎までは直線距離で11km程離れている。
Zenzanon 75mm F2.8 絞り8。カメラはNikon D7200。シャッター速度は失念。
写真には後加工していない。(手前の高いビルの屋上看板の文字にはモザイク加工を施した。)
上の写真から県庁舎の部分を切り出したのが下の写真だ。シャープな写りで流石Zenzanonだ。
◎アダプターの評価
自画自賛だが、スマートなマウントアダプターを3Dプリンターで作ることができた。
焦点はレンズの距離目盛のとおり無限遠から0.6mまで合うので精度も問題ない。
鏡胴部分を延長すれば接写用のアダプターも簡単に作れる筈だ。
唯一の問題は
Zenzanon側のマウントにロック機構が無い点だ。
マウントが固いので緩んでレンズが脱落する可能性は少ないが、
ゼロではない。
この問題を解決できれば完璧なのだが、良いアイデアを思いつかなかった。
マウントアダプターを取り付けて撮影するのは手間が掛かる作業だと考えていた。
ところが実際には簡単だった。Zenzanonにはレンズに絞込みボタンが備わっているので
擬似開放測光が出来る。手軽に撮影できるシステムで実用性は充分に在る。
このデータを
Thingiverseへ掲示した。